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あーるどらがいろんなことに挑戦するブログ

あーるどらがいろんなことをする

【体験談】西成のおっさんと漫才した話【後編】

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面食らった。

打ち解けてタメ口で話していた渋沢さんが突然「ついて行ってはいけない知らないおじさん」に変わったので、僕は背筋を硬直させて渋沢さんの次の言葉を待った。

 

「あと15分したら三角公園の居酒屋が開くからな。そしたら一杯付き合えや。」

 

 

ほっとした。部屋に監禁されて家に大量の仲間が押し寄せて金品を奪って行くのではないか。なんて想像をしてしまっていた。僕の心の底にはまだ警戒心が残っていたのだった。

 

背中は強張ったまま、笑顔で「良いですね」と応え、家を出て三角公園まで一緒に歩いた。

 

三角公園に行くまでの道のりもすごかった。

渋沢さんは自転車放置を取り締まる人たちの前に急に立ちはだかって

 

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と叫んだ。

 

「ちょっ、なにしてんの渋沢さん!」

笑いながら止めると

 

「あいつらは元警察や。警察と税務署はあかん。」

 

とお決まりの言葉を言った。笑っていなかった。

 

 

三角公園に着いた。

そこは本当に異様な雰囲気で、今まで一緒にいた渋沢さんが綺麗な人に見えるくらい、そこにいる人は皆しっかりホームレスだった。

 

渋沢さんは「お前は相方を探すんやろ。試しにあいつらに話しかけてみぃ。」と4人くらいでお酒を飲みながら話している人達を指差して言った。

 

みんな競艇の話で盛り上がっていた。

とてもじゃないが僕が割り込んで

「ボート好きなんですかー?かっこいいですよね、僕も中学の時に遠足で乗りましたよカヤック!」

なんて言えそうもなく、退散した。

 

渋沢さんについて行くしかない。

渋沢さんは公園の石の縁に腰掛けるどっしりしたおじいさんの隣に座った。

おじいさんは真っ赤なジャンパーを羽織っていだ。ジャンパーからは白い小さな羽が飛び出しまくっていたが、なぜか顔にもたくさんの羽がついていた。

渋沢さんの友達らしい。

「この人はお前なんかよりよっぽど賢いからな。俺より前からいる人や。挨拶しとき。」

「おはようございます。」

「ぁー、~~ー~~@)¥&@。」

おじいさんの声は渋沢さんよりも聞き取れなかった。

 

おじいさんと渋沢さんと僕は3人並んで公園の石段に座った。

おじいさんと渋沢さんはお酒を、僕はまた渋沢さんに奢ってもらった50円のコーヒーを手に、3人で話していた。

 

あまりにも渋沢さんがおじいさんを褒める上に、おじいさんの風格やオーラから、このおじいさんはここの長老的な人なのかもしれないぞ。と思った。

 

おじいさんは歩いているおっさんに片っ端から声をかけていた。

「ぅおぉー、お前、この前はすまんかったなぁ」

と道行く人全員にほとんどこのセリフで声をかける。

 

やはり長老はここのみんなと知り合いなんだなと関心していたが、声をかけた全員から

「うるっさいわ!!」「だまれ!!」

と罵倒されていた。

どうやら長老ではなかったらしい。

声掛けおじいさんなんだろう。

 

道行く人の会話を聞いていると、競艇の話と空き缶が1キロ105円に値上がりしたことで持ちきりだった。

 

一人のおっさんがこちらに歩いてきた。

「昨日の競艇大当たりや!30万や」

 

僕が驚いていると

渋沢さんが「おお、言うたな。証拠あんのか」と強い喧嘩のような口調でこたえた。

おっさんが「家にあるわ。」と答えそのまま去っていった。

渋沢さんが「あいついっつもああやって大金当てたって嘘言うねん。絶対持ってこおへんぞ」

と鼻で笑った。

 

いつもそうなのか。

この人たちはiPhoneは知らないけれど毎日ここに集まることでつながっているんだな。

 

また一人おっさんがゆっくりと歩いてきた。

「いらんねやったらこれくれへんか。」

3人の飲み終わった空き缶を見ていた。

 

またも渋沢さんがこたえる。

「おー、もっていけもっていけ。値上がりしたからな。」

 

おっさんは渋沢さんと長老の空き缶は持っていったのに、僕の空き缶だけ残していった。

よそ者だからか?それとも見落としたのか、まだ中が入っていると思ったのか。

不思議に思い、「あの、これは持ってかなくていいんですか?」と去って行くのを呼び止めようとすると

渋沢さんに

「アホかお前!」

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、、、、そうなんや。

ここにはここの常識があるんだな。

 

 

その後、渋沢さんとまた二人になり、居酒屋に入った。

中は綺麗な居酒屋だった。昼だったのでお客さんは一人くらいしかいなかった。

 

この後バイトがあるのでコーラを飲むことにしたら、瓶のコーラが出てきて、渋沢さんはテンションが上がっていた。

「瓶のコーラは珍しいからな!お前これ写真撮っとけ!な、珍しいから。昔はようあったけどお前こんなん今のもんは知らんやろ。」

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確かに珍しいが意外とちょくちょく目にする。

しかし一応写真に撮り、飲んだ。

 

「お前タバコは吸わんのか」

渋沢さんが聞いてきた。

「はい、酒もタバコも苦手なんですよね。」

「つまらんのぉ、これやから西川きよしやねん」

「いやー渋沢さんはタバコ吸うんですか?」

お酒を飲んでいるところは何度も見たがそういやタバコは吸っているのを見たことがない。

 

「吸うけど今持ってないから吸わへんだけや。西成の人間はシケモクは絶対吸わへんねん」

 

「え、なんでですか?」

 

意外だった。シケモクとは道に落ちてたりする他人が吸った後のタバコのことだ。

 

タダでタバコが吸えるならラッキーと吸うものだとばかり思っていたのだが、それをしないとは。

他人のタバコを吸うような卑劣なことはしないというプライドだろうか。

 

「それはすごいですね」

「すごくないよ。西成の人間は結核が多いからな。シケモク吸ったらな、」

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常に想像の斜め上を行かれる。

 

西成のおっちゃんが口をつけたものに口をつけると結核がうつるかもしれないということか、、、。

 

 

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僕は飲み終わったコーラの瓶を眺めながら、深く考えるのはやめようと思った。

 

 

そのあとは、バイトがあったので渋沢さんを居酒屋に残してお別れした。

渋沢さんは「また来いよ。」と笑って見送ってくれた。

「家か、三角公園か、この店におるからな。」

 

今日も渋沢さんはどこかにいるのだろう。

また行こうと思う。